茂木健一郎の「ぶっつぶせ、偏差値入試」連続ツイートに対する考察

脳科学者として知られている茂木健一郎氏が、先週末、Twitterで、「ぶっつぶせ、偏差値入試」という連続ツイートを呟き、ネットで話題となっています。

偏差値入試は必要では？

偏差値入試に関してそれを全面的に肯定する人はいないと思います。誰もが、偏差値入試に関しては否定的な見解を共有していること相像に難くありません。しかし、ネットでは、むしろ偏差値入試を歓迎している意見が多いように思います。それは、人生の一時期、基礎学力を学ぶためには、受験勉強というものが必要で、偏差値の高低で一喜一憂する受験生にしてみれば、偏差値に振り回されることは、ある程度許容しなければならないというものです。

茂木健一郎氏は受験の成功者

偏差値入試を茂木健一郎氏のように否定すると、若者受けはいいと思いますが、しかし、それは、優等生の言い分でしかありません。茂木健一郎氏は、偏差値が高いままに、入試に臨み、そして、合格というものを勝ち取ってきた受験の成功者です。だから、「ぶっつぶせ、偏差値入試」連続ツイートが呟けたのだと思います。それは、実際に偏差値が低い大学に入学しなければならなかったものの憂さ晴らしにはなるかもしれません。しかし、それ以上のものは何ももたらさないと思います。

一発勝負のペーパーテストは平等

受験の成功者が「ぶっつぶせ、偏差値入試」と連続ツイートしても、それは、個人的な憤懣の表明でしかなく、入試制度を変えるのには何の影響力もありません。況して、人物評価に重きを置くというこれから導入が見込まれる入試制度に、ある種の憂いを感じるばかりです。人物評価で大学受験するというのは、一発勝負で、表向きは、誰もが平等に入学試験――これに関して東京と地方の落差は歴然としていて、地方出身で東京の予備校に通ったものからすると、受験勉強に関して予備校で教わった内容が、学校で教わったこととあまりにも違い、その落差に愕然とします――ともいえる現行の入試は、一見すると人物評価などしないペーパーテストのみでの入試故に、不合理を感じるかもしれませんが、人生の不合理は、受験生の特権ではありません。個人的には私は、入試に失敗し、希望校に入学できなかったのですが、それでも、偏差値入試をぶっつぶせなどとは思いません。むしろ、偏差値が低い大学から個性的で面白い人物が出ることに期待したいのです。

東大卒業だから

個人的には、偏差値に関してこれまでまったく気にしたことはありません。大して偏差値が高い大学の卒業生とは言えませんが、私は、個人的に東大が大嫌いで、どんなに成績がよくても東大にだけは入学したくないとばかり思っていた受験生でした。この考えは現在でも変わっていません。東大が生理的に嫌いになのです。確かに、東大卒となれば、大学卒業後も例えば水戸黄門の「葵のご紋」のような「箔」が付くかもしれませんが、私は東大卒に関して何にも感じません。返って東大卒というと「この人は受験勉強というゲームが巧かった」としか思えないのです。私は、大学卒行後も、勉強しない時期はありませんでした。むしろ大学卒業後の方が勉強する量は多いと感じます。

茂木健一郎氏の「ぶっぶせ、偏差値入試」は茂木氏が東大卒業であるから言えるのであって、茂木氏が仮に低レベルと言われている大学から這い上がった人ならば、偏差値入試の長所と短所を比較して、短所よりも誰もが平等にペーパーテストの一発勝負で決まる――とはいえ、東京では大学付属高校が多く、この点も東京と地方の大きな差です――現行の大学入試制度が全面的には肯定せずとも、貧乏人でもペーパーテストがよければ、合格できるという建前に偏差値入試の大きな利点は否定しようがないということが解かると思います。

茂木健一郎氏の「ぶっつぶせ、偏差値入試」連続ツイートは、耳に心地よく響きますが、現行の入試制度を否定して、人物本位で入学を決める制度への移行は、貧乏人には、高いレベルの大学はますます入学し辛くなるのは目に見えています。それは、日々の素行で入学の合否が決まるのです。貧乏人にはそれは不利にしか働きはません。何故ならば、貧乏人は、お金持ちの人に比べれば、どうしても素行は悪くなる環境にあると言え、それでは、ますます大学入試においての親の所得格差がで、大学の高低が決まってしまう可能性が大だからです。それでは、格差社会の肯定でしかありません。つまり、茂木健一郎氏の「ぶっつぶせ、偏差値入試」は風が吹けば桶屋が儲かるではありませんが、とどのつまりは格差社会の許容を意味するのです。それは茂木健一郎氏にとっては不本意に違いありません。

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